• ガシャーンとポケモンセンターに突っ込んだ私たち。

    ジュンサーさんは親指をグッと立てると、

    「大怪我ポケモン宅配ッス」

    ジョーイさんは、サト君の抱いたポケモンを見て

    「ポケモンの種類は、ピカチュウ系ね」

    そう言うと、ラッキーたちを呼び寄せ、ストレッチャーでピカチュウを運ぶ。

    ……考えてみれば、ピカチュウ系って言い方可笑しいよなぁ。

    でも、あたしはあえて口に出さなかった(笑


    「あの…俺は」

    「あなたは?」

    ジョーイさんに声をかけたサト君。

    そして、ジョーイさんの問いをジュンサーさんが答えた。

    「このピカチュウの保護者…トレーナーです」

    「俺になにかすることは…」

    『ないですか』と言い終わる前に、ジョーイさんに即答される。

    「反省することね」

    キッパリと言われ、サト君はしばし絶句した。

    「一人前のポケモントレーナーになりたければ…あんなに傷つくまで戦わしちゃダメ…」

    そして、ジョーイさんは厳しく付け加える。

    「今君に出来るのは、その待合室でピカチュウの無事を祈ること。えーと、そこの娘…」

    です」

    あたしは名前を答える。

    ちゃん、その子のそばについててあげてね」

    ジョーイさんに言われ、私は微笑み返す。

    「俺にできることって…それだけ…?」

    少し、不安と不満の混じった声でサト君が言う。

    「治療は私に任せなさい。ジュンサーさん、遅くまでお疲れ様です」

    ジョーイさんがペコリとお辞儀をして、それに応えるようにジュンサーさんが敬礼した。

    そして、ニカっとしてジュンサーさんは、自分の両頬に人差し指をやる。

    「だってお勤めだもーんvあっ、いけなーい!お勤めの交番、開けっ放しで来ちゃった」

    「閉めるとこはしめなきゃ」

    「コイツァいけねぇ!」

    テヘ、と笑うと急いでバイクに乗り、交番へとジュンサーさんは戻っていった。

    ……あの人、本当に大丈夫なのか…?

    「治療室の扉も閉めます」

    そう言って、バタンと扉が閉まる。

    ピカッとついた治療中のランプを、不安そうに見つめるサト君が、私の隣でいた。







    ポッポ、ポッポ、ポッポ…

    治療中のランプがついてから2時間。

    壁のポッポ時計が夜の10時を知らせた。

    私とサト君は、待合室でじっと待っている。

    「ねぇサト君、電話だよ」

    受付の横にあった電話を指差した。

    「電話かぁ…」

    「お母さんにかけなよ」

    「そうだな」

    ニコと笑うと、サト君は受話器を取ってプッシュボタンを押した。

    マサラタウンにいる、サト君のお母さんの電話番号だ。

    「はいはーい」

    テレビ電話の向こうから、真っ白い顔が現れる。まるで、キョンシーのようだ。

    実際、マジで怖かったので、サト君もあたしも少々絶句してしまう。

    ハッと我に返ったサト君は、画面の中の顔を指差して、

    「誰だ、お前は」

    「見〜た〜な〜……」

    お化け映画のように白い顔の人は呻くと、ベリッと皮(?)をはいだ。

    白い薄皮のしたから現れたのは、サト君のお母さん。

    サト君を私は顔を見合わせて、苦笑した。

    「ママ…冗談はよしてよ。てか、あの顔で電話に出ないでよ…」

    息子の切実な願い。私だって言いたくなるぞ?ウン。

    「一生の不覚…見られたのがサトシとちゃんで良かった。…………ん?そういうキミはサトシじゃないか」

    「そう、ママの息子のサトシだよ」

    サト君は、ため息をつきながら頷いた。

    「あ…ヤダ!サトシ!うちの子じゃない。ソコ、どこ?」

    …寝ぼけてるのかしら、サト君のお母さん。

    そう思ったのは、きっとサト君も一緒なはず…。


    「トキワシティの」

    「ポケモンセンター」


    町の名前をサト君が行って、いる場所を私しが言う。

    特に意味はないのだが、無駄に楽しかった。

    「あらま!もうトキワシティまで行ったのかい!スゴイぞ。うちのパパなんて……」







    これから、3分ほどサト君のお母さんの話が続くことになる…。

    うぅーん、長かった…。




    「サト君、お母さんよく喋るね」

    「いつものことだよ」

    ハハ、と苦笑してサト君が言う。

    そして、今日何十回目かのため息をついた。