• どうしよう…これじゃあフリーザーは使えない。

    急に雲行きが怪しくなって、雨が降り出した。

    おまけに雷まで鳴ってるよ…!

    「これじゃあ…フリーザーは出せないな」

    「何か言った?」

    「いや、何も」


    今は他の事に迷ってられない。

    瀕死に近いピカチュウを一刻も早くポケモンセンターに連れて行かないと!


    「来たッ!」

    土がぬかるんで、自転車が進みにくい。

    それでも、神様はあたし達を困らせたいのか、どんどんオニスズメは増える。

    「どうしよう…!仕方ない、行けっバタフリー!サイケ光線!!」

    虹色の光線が放たれる。

    ボトボトと、こんらんしたオニスズメが落ちる。

    でも、バタフリー一匹と、オニスズメじゃ力の差が知れていた。

    「戻って!バタフリー!サト君、もうチョット急げないの!?」

    「無理に決まってんだろ…。って…うわっ!」

    サト君が、チャリでこけた。

    なんとかバランスよく着地できたあたし。

    ピカチュウは、カゴから放り出されて、動けない状態。

    「くそー!」

    声を聴いてふと、サト君の方を振り向いたときには時すでに遅し。

    仁王立ちして、オニスズメに正面から立ち向かっていた。

    「サト君!」





    サト君は、傷だらけ。

    ピカチュウの横に横たわった。

    「サト君!…サト君!?」

    必死にサト君の名前を呼んだ。

    サト君の方に気を取られていて、後方からくるオニスズメに気付かなかった。

    ボールからポケモンを出していては間に合わない。

    身を縮め、しゃがみこんだ。




    …その刹那。




    ピカチュウが、そっとあたしの肩を踏み台にし、

    空へジャンプして…雷を放つ。

    初めて、ピカチュウの強さを垣間見た。

    その一撃を放ったあと、ピカチュウは地面へと落下した。





    「ポケモンも、その主も危ないことするわね…」

    オニスズメはいなくなって、空は快晴へと変わった。

    「サト君…」

    パチ、とサト君が目を覚ます。

    「お、オニスズメは!?」

    「ピカチュウが倒したよ」

    サト君の横には、すーすーと寝息を立てて眠るピカチュウ。

    「そっか、スゴイな」

    「うん、スゴかったよ。オニスズメもいなくなったし、早くトキワのポケモンセンターに行きましょ」

    「そうだな。…何だ!?アレ!」

    サト君の指差した方向を見ると、金色に輝いた、虹色の羽をもつ…ポケモン?

    「すっげーキレイだな」

    「ホント……いつか、また会えるといいね」